死命(しめい)
誤植報告
ISBN:978-4-16-381320-2 著者:薬丸 岳(やくまる がく) 発行:2012年4月25日 第1刷 ◎90ページ 15行目ほか◎ 誤「ご存知ありませんか」 正「ご存じありませんか」 [ごぞんじ]をワープロソフトで変換すると[ご存知]が最初に 示されるからでしょうか、「ご存知の…」「ご存知ですか」 などの表現を多く目にします。 [存知](ぞんち=知っていること、承知していること)ではなく [存じ](ぞんじ=知っていること、承知)の尊敬語で、[ご]を 付けています。 「知っている」「覚える」「考える」「思う」の謙譲語で[存ず る]。 313ページなどでは「…ご存じでしょうか」と正しい表記が見ら れます。混在ですね。 ◎388ページ 3行目◎ 誤「…性器を見つめながら、母親は隠微な笑みを浮かべている。」 正「…性器を見つめながら、母親は淫靡な笑みを浮かべている。」 [みだら]という意味で使っていると思いますので、「かすかで、 表面からは容易に分からないさま」の[隠微]ではないでしょう。 ◎388ページ 19行目◎ 誤「…ペーパーナイフを取り出した。丹精込めて先を尖らせてくれ た澄乃からのプレゼントだ。」 正「…ペーパーナイフを取り出した。丹精して先を尖らせてくれ た澄乃からのプレゼントだ。」 「…ペーパーナイフを取り出した。丹誠を込めて先を尖らせて くれた澄乃からのプレゼントだ。」 難しいというか、解釈によって意見の分かれる表現です。 [丹誠]と[丹精]、[たんせい]と読む二つの言葉があります。 ワープロソフトの文字説明によると、 ――――― [丹誠]:真心→丹精。「丹誠(=丹精)を凝らす。丹誠(=丹 精)を尽くす」 [丹精]:【一般的】真心を込めて行う。「父が丹精した盆栽」 ――――― これでは、明確に判断するには無理があるかもしれません。 小学館の『大辞泉』では、 ――――― たん‐せい【丹誠/丹精】 [名](スル)《古くは「たんぜい」とも》 1 (丹誠)飾りけや偽りのない心。まごころ。誠意。丹心。 赤心。「―を尽くす」「―を込める」 2 心を込めて物事をすること。「母の―になる手料理」「―し て盆栽を育てる」 ――――― 旺文社の国語辞典では、 ――――― [丹誠]:(名・他スル)心をこめて事をなすこと。心づくし。 (名)まごころ。まこと。丹心。赤心。「―をこめる」 [丹精]:(名・他スル)心をこめて丁寧に物事をすること。 「―して作る」 ――――― こちらの説明が分かりやすいでしょうか。 名詞で「丹誠を込めて」と使うならいいが、動詞として使える [丹精]を「丹精を込めて」と使うと[込める]の重複になるのでは ないか、ということです。 ところが、各新聞社、日本放送協会の『用字用語の手引』類は、 この二つを区別することなく[丹精]で統一(共同通信社は用例 なし)しているようです。 TVのニュースでも、よく「…タンセイ込めて育てた○○」と。 NHKの菊花展を紹介するニュースで「…タンセイした菊は…」と 紹介しているのを聞いたことがあります。 取材記者の原稿によるのでしょうか? 日本語の持つ意味が薄れてきているのは時代の流れ。 新しい言葉が生まれ、間違った使い方でもそれが定着し認知され ると“正しい言葉”になってしまいます。 言葉一つ一つを大切にしたいと思います。
報告者:nande3