警察庁から来た男
誤植報告
ISBN:978-4-7584-3339-6 著者:佐々木 譲(ささき じょう) 発行:2009年6月28日 第十七刷発行(ハルキ文庫) 『笑う警官』に続く「道警シリーズ」の第二弾 以降、『警官の紋章』『巡査の休日』『密売人』『人質』が既刊 <誤植というより校正ミス? 意図的なミス?> ◎12ページ 12行目ほか◎ 誤「…札幌の歓楽街・薄野(ルビ=すすきの)も…」 正「…札幌の歓楽街・ススキノも…」 間違いとは言えないのですが、新聞用字用語集に「紛らわしい地 名」として (1)ススキノ(2)薄野(3)すすきの (1)は歓楽街として使う場合で「札幌・ススキノ」と書く、 (2)は地域の総称。交番は「薄野交番」、(3)は地下鉄の 駅名。行政上の地名としては存在しない との説明があります。 フィクションです。実在の名称でなくともよいのですが、次ペー ジに「薄野交番」が出てきますので、街を表すなら「ススキノ」 でしょうか? 同じく13ページに「薄野浄化条例」、32ページに「薄野条例」と いう言葉が出てきます。 「ススキノ条例」(通称)を指しているものと思われます。 ちなみに正式な条例名は「札幌市公衆に著しく迷惑をかける風俗 営業等に係る勧誘行為等の防止に関する条例」です。 ◎21ページ 15行目◎ 誤「河野は五階の階床ボタンを押した。」 正「河野は五階の行先(階)ボタンを押した。」 難しい言葉に遭遇しました。「階床」は「かいしょう」と読む のでしょうか。「かいゆか」? 建築用語で「二階床組(にかいゆかぐみ)」「二階床」「上階床 と下階床」などはあるようです。この「二」が省略された言葉な のでしょうか? ネットで「階床」を検索しても、明確な答えは見つかりませんで した。 エレベーターの構造を調べてみました。 メーカーによって違いはありますが、「階床表示(灯)」という 名称が見られます。「2」「3」……「15」「16」…と階数をデジ タル表示します。 ドア開閉ボタンには数字はありません。連続して数字が書いてあ るのは「行先ボタン」「行先階ボタン」とありました。 「階床ボタン」という言葉は、なんとなく意味は分かりますが、 それほど一般的な言葉ではないようです。 ◎32ページ 11行目ほか◎ 誤「北海道警察本部の本庁舎は、札幌市の官庁街、北二条通りに面 して建っている。」 正「北海道警察本部の本庁舎は、札幌市の官庁街、北二条通に面し て建っている。」 これも微妙な話。札幌市内の正式な「通り」の名称の場合「通」 に送り仮名は付さないようです。札幌市内の地図表記もそうです し、市のHPなどでも「通」となっています。 本書には「札幌方面大通警察署」(札幌方面中央警察署を指す架 空の名称)「大通公園」(正式名称)「大通六丁目広場」(大通 公園西六丁目の広場を指す?)など虚実が入り交じっています。 道路に関しては「南四条通り」「西五丁目通り」と「り」を送っ たり、「国道三十六号線」と「線」を付けたり。 位置や場所を限定したり特定できる重要な表現として用いている ので、いかにも一般的な名称・通称を使うのではなく、正式な名 称を使ったほうがいいと思います。 ◎33ページ 1行目◎ 誤「ミラーガラスを全面に張っているから、一見解放的で透明な 役所と想像できるが…」 正「ミラーガラスを全面に張っているから、一見開放的で透明な 役所と想像できるが…」 北海道警察本部の本庁舎ビルを表現した文章です。 「束縛・圧迫を解いて自由にする」意の[解放]ではなく、「開 け放つ、出入り自由」の意味の[開放]でしょう。 ◎38ページ 12行目◎ 誤「…芝生の傷(ルビ=いた)んだ箇所に新しいロール状の芝を貼 (ルビ=は)っていたのだった。」 正「…芝生の傷(ルビ=いた)んだ箇所に新しいロール状の芝を張 っていたのだった。」 こちらも細かいことです。 [貼る]は常用漢字外なので[張る]を使うほうがいいのです が、2010年改定の新「常用漢字表」に[貼る]が加わりましたの で、そうも主張できません。 漢字の意味からも、糊(のり)などをつけて物を平らな面につけ る。「封筒に切手を―・る」「ポスターを―・る」「傷口に絆創 膏(ばんそうこう)を―・る」「タイルを―・って壁を仕上げる」 と同意で、多くは[貼る]と書くパターンなのでしょう。 土木用語に[張(り)芝][張芝工](芝を一定の大きさに整形 したものをのり面に張る工法で、のり面保護工としては最も古い 歴史を持つ)、また造園用語には「芝の張り方」があります。 「芝を張る」がピッタリきます。 ◎40ページ 6行目ほか◎ 誤「…本来はひとあたりのよい、世話好きな人物らしい。」 正「…本来は人当たりのよい、世話好きな人物らしい。」 本書では「ひと」「ひとり」「ふたり」「ひとつひとつ」と平仮 名表現が多く見られます。「ひとあたり」は、その流れでしょう か。 14ページに「人影は見当たらない」という文章があります。 ここは「人当たり」がよろしいかと。平仮名ばかりでも読みづら いものです。 ◎44ページ 12行目◎ 誤「…首をすくめて、藤川の顔色をうかがってきた。」 正「…首をすくめて、藤川の顔色を窺ってきた。」 [窺う]は新聞漢字表(2009年時点)にない文字、常用漢字外と いうこともあり平仮名であっても漢字でも構わないのですが、33 ページに「…外からは内部は窺(ルビ=うかが)い知ることがで きない。」とありました。 統一して漢字表記がふさわしいのでは。校正の問題です。 ◎55ページ 13行目◎ 誤「よく意志疎通ができるものだな」 正「よく意思疎通ができるものだな」 まず、「意○疎通」という四字言葉はない、ということも聞きま す。 実用日本語表現辞典に[意思疎通]とは「互いに考えていること を伝え、理解を得ること、認識を共有すること、などの意味の表 現。意思の疎通。コミュニケーションとも言う。 」とありまし た。ネット検索で出てくるのはこれくらいでしょうか。 [意志」は「物事を成し遂げようとする心」の意で「意志強固」 「意志薄弱」「意志を貫く」などが例。 [意思]は「持っている考え、思い」の意で、法律用語に多い そうです。例は「自由意思」「意思表示」「意思の疎通を欠く」 など。 四文字で表現するなら「意思疎通」でしょう。 ◎59ページ 3行目◎ 誤「…許認可に関(ルビ=かか)わる書類を精査していた。…」 正「…許認可に関わる書類を精査していた。…」 本当に細かいことです。 38ページに「造園業者が関(ルビ=かか)わっているが…」と ルビ付きで出てきます。42ページは「きみに関わることであるの は、たしかだと思うが」とルビなし。59ページでルビ付き、75 ページ、120ページにもルビ付きで出てきます。 表外音訓なのでルビを振るのもいいのですが、初出で付け、次か らは省略してもいいと思うのですが。 付けるなら42ページの「関わる」にも。統一は校正の問題。 270ページでは8行目に「札幌方面本部はいっさい関(ルビ=か か)わっていない。」、2行あとの10行目に「…架空の背景作り に関わった。」とルビなしです。 ◎92ページ 3行目◎ 誤「…栗原の対応に平本を当てたということは…」 正「…栗原の対応に平本を充てたということは…」 人物に関して「充当、割り振る」の意味ですので。 ※版を重ねているのですが、気になる部分が多々ありました。
報告者:nande3