流れ星の冬
誤植報告
ISBN:4-575-50657-5 著者:大沢 在昌(おおさわ ありまさ) 発行:2007年12月30日 第17刷発行(双葉文庫) 1994年に双葉社が刊行、1998年9月15日に文庫化第1刷発行。 版を重ね、年を経た第17刷を読む。 大沢在昌が『新宿鮫 無限人形』で直木賞を受賞した年の作品。 <誤植というより校正ミス? 意図的なミス?> ◎94ページ 8行目◎ 誤「…半年ぶりに会った始めだけは、志木とこれから対決でもしな くてはならないような緊張感が漂う。」 正「…半年ぶりに会った初めだけは、志木とこれから対決でもしな くてはならないような緊張感が漂う。」 同ページ12行目に「初めて会ってから四十年以上の時間が流れ た…」、117ページの8行目には「初めのうちはしかたがない」と いう文章があります。 [最初]の意味で使っていますので「初めだけは」。 ◎122ページ 12行目◎ 誤「ボディシャンプーがあるのに、石鹸をとり…」 正「ボディーシャンプーがあるのに、石鹸をとり…」 間違いとは言えないのですが、最近の流行なのでしょうか、長音 を省いて言葉を短くする傾向があるようです。違和感があります ね。 「パーティ」「パーソナリティ」「バリュ」などなど。 多くのカタカナ語辞典、新聞用字用語集の「外来語用例集」では 「パーティー」「パーソナリティー」「バリュー」「ボディー」です。 155ページ15行目には「紅茶のガラスポットとティカップが前に おかれていた。」という文章もあります。 その2行後には「デザイナーのような専門的な仕事を…」と使っ ていますので、やはり「ティーカップ」でしょう。 ◎122ページ 15行目ほか◎ 誤「支度をしていた部屋係りがいった。」 正「支度をしていた部屋係が言った。」 これも間違いではないのでしょうが、「特定の仕事・役目を受け 持つこと。また、その人」の意味で、「受付-」 「会計-」の ように名詞の下に付くときは、多く「がかり」の形になり、 「係」と書くのが一般的解釈と思います。 「係(り)結び」「係(り)助詞」ならいいのですが、「課長」 と「係り長」の例はないのでは。 ◎123ページ 9行目◎ 誤「…失望とそして不信の混じった気持を…」 正「…失望とそして不信の交じった気持ちを…」 「絵の具を混ぜる」ように「とけ合うまじり方」ではなく、「と け合わない、区別のつくまじり方」なので「交じった」かと。 ◎128ページ 9行目ほか◎ 誤「…太え女だぜ。皆んなにいい顔して、お手当てをとってやがっ た」 正「…太え女だぜ。みんなにいい顔して、お手当をとってやがっ た」 「皆(みんな)」は「皆(みな)」の撥音添加なので「皆んな」 のように「ん」は送らないようです。 また、表外音訓なので新聞社などは平仮名書き「みんな」に統一 しているようです。 [手当て]は「治療や対策」の意味で、[手当]は「金銭に関す ること」で、使い分けています。 ◎151ページ 16行目ほか◎ 誤「…父のことを先生は御存知かもしれないと思って」 正「…父のことを先生はご存じかもしれないと思って」 153ページでは「…父が先生を存じあげていたかは…」と使い、 166ページなどに「ご心配をおかけしたのでは…」、192ページで は「ご存知」との表記があります。256ページには「ご存知」と 「御存知」が出てきます。 敬意を表す接頭語が[御]と[ご]で混在しています。平仮名の [ご]に統一。 [ごぞんじ]をワープロソフトで変換すると[ご存知]が最初に 示されるからでしょうか、「ご存知の…」「ご存知ですか」 などの表現を多く目にします。 [存知](ぞんち=知っていること、承知していること)ではなく [存じ](ぞんじ=知っていること、承知)の尊敬語で、[ご]を 付けています。 「知っている」「覚える」「考える」「思う」の謙譲語で[存ず る]。 ◎165ページ 14行目◎ 誤「思いもよらない、暖かな気分になっていた。」 正「思いもよらない、温かな気分になっていた。」 気象や気温に使う「寒の対語」ではなく、一般用語で「冷の対 語」の「温かい」になります。 ◎205ページ 1行目◎ 誤「…観葉樹のみずみずしい葉を見つめた。」 正「…観葉植物のみずみずしい葉を見つめた。」 分からなくはありませんが、「観葉植物」が一般的ではないで しょうか。 ◎222ページ 7行目◎ 誤「…を博打うちだと思いこんでいたようだ。」 正「…を博打打ちだと思いこんでいたようだ。」 これも間違いではないのですが、漢字[打]を使った熟語なので 「博打(ばくち)打ち」か「博徒」がいいような気がします。 表外音訓を嫌うなら「ばくち打ち」に。 ◎236ページ 8行目◎ 誤「…俺たちのことをサツに指(ルビ=さ)すといってたからな」 正「…俺たちのことをサツに刺すといってたからな」 これも間違いではありません。ですが…。 辞典によって見解は異なりますが、[指す][差す][刺す]には、そ れぞれに「密告する」という意味があるようです。 仲間が仲間を「サツ(警察)に密告する」のですから、[刺す]の 字がふさわしいように感じます。 ◎270ページ 8行目◎ 誤「あなたが場所をご存知ないなら、昔のお仲間がどなたかご存知 の筈だ。」 正「あなたが場所をご存じないなら、昔のお仲間のどなたかがご存 じの筈だ。」 さっと読んで? 二度読んで?? 何か違うような気が…。 ぱっと読むと、「仲間が誰かのことを知っている」とも読み取り かねません。 「あなたが場所をご存じないなら、昔のお仲間がご存じの筈 だ。」 でも意味は通じるような…。 ※第17刷の文庫本です。初版から何人もの目が通り、校正も行われ てきたはずですが、細かく見ていくと気になる箇所がたくさんあ りました。
報告者:nande3