震える牛
誤植報告
ISBN:978-4-09-408821-2 著者:相場 英雄(あいば ひでお) 発行:2013年5月13日 初版第1刷発行(小学館文庫) 2012年2月に小学館が単行本として刊行、加筆改稿して2013年5月に 文庫化。 <誤植というより校正ミス? 意図的なミス?> ◎19ページ 8行目◎ 誤「…今後も事業拡大をはかってまいります」 正「…今後も事業拡大を図ってまいります」 間違いではないのですが、漢字書きがよろしいようで。 後のページで[はかる]の使い間違いがあります。 ◎25ページ 9行目◎ 誤「滝沢らが執った戦略は…」 正「滝沢らが採った戦略は…」 「扱う」という意で「指揮を執る」の[執る]ではなく、「採用」 の意で「その説を採る」の[採る]か、一般用語の[取る]または平 仮名書きで「とる」。 ◎48ページ 1行目◎ 誤「…私の手の甲をいきなり斬りつけたあと、左手で…」 正「…私の手の甲をいきなり斬りつけた後、左手で…」 間違いではありません。が、15ページでは「…店員の左手を斬り つけた後、犯人は…」と漢字書きです。統一して。 ◎50ページ 3行目◎ 誤「どこからか後を尾(ルビ=つ)けてきたのかもしれません」 正「どこからか跡を尾(ルビ=つ)けてきたのかもしれません」 「うしろ」をワープロソフトで変換すると「後」と出ますが、 辞典で調べると「うしろ」は「後ろ」。 [後]の訓読みは「あと」「うし(ろ)」「おく(れる)」「しり」「のち」。 「あと」と読むとすると、漢字なら[跡]がふさわしいと思いま す。 「先・前の対語」の[後]ではなく、「そっと人のあとについてい く。尾行する」という意味合いで「痕跡」の[跡]を使ったほうが よろしいかと。 ◎52ページ 11行目ほか◎ 誤「…素っ頓狂な声をあげた。」 正「…素っ頓狂な声を上げた。」 意味を考え、「あげる」にどの漢字を使うかです。 54ページに「売り上げをあげる仕組み」(「アップする」という 意味では「上げる」)、66ページに「零時半には引き揚げまし た」「俺と一緒にあがってますね」(引き揚げるという意味では 「揚がる」、仕事が終わるという意味では「上がる」)などが出 てきます。 96ページや234ページでは「仏壇に向かい…線香をあげた」「ご 実家にお線香をあげに参りました」と平仮名表記ですが、229 ページでは「最初にお線香を上げさせてください」と正しく漢字 を使っています。 個々に見ていくと間違いではありませんが、俯瞰すると、「校正 の問題」であることが見えてきます。表記統一は必要でしょう。 ◎92ページ 9行目ほか◎ 誤「首都圏の大動脈である国道一六号線…」 正「首都圏の大動脈である国道一六号…」 一般的に「○○号線」と称していますが、道路名は路線番号のみ が正式。 同じページに「一六号沿線と太田で差があるのは…」という文章 が出てきます。「“一六号線”沿線」ではありません。 ◎107ページ 8行目ほか◎ 誤「この若頭補佐をご存知ですか」 正「この若頭補佐をご存じですか」 ◎124ページ 1行目◎ 誤「コシヒカリの稲藁(ルビ=いねわら)を食べて育った牛です」 正「コシヒカリの稲藁(ルビ=いなわら)を食べて育った牛です」 難しいですね。これも間違いではないのですが…。 まず、[稲藁]という言葉が出てくる辞書を探すのが難しい。 『広辞苑』には掲載されていないようです。 「読み方」をネットで検索すると、「いねわら」「いなわら」 ともにあり、辞典では併記しているようです。 どちらが正しいか。「ニュースなど放送で“いなわら”と言って いる」ので「いなわら」が正しい、とする意見が多いようです。 ◎170ページ 12行目◎ 誤「…億単位の年棒を勝ち取っていた。」 正「…億単位の年棒を勝ち得ていた。」 微妙な表現です。 賞金・商品なら、「争いに勝って自分のものにする」意味で「勝 ち取る」がピッタリきますが、年棒(給与)ですから。 辞書によっては、「戦って自分のものにする。努力して獲得す る」の意味を挙げていますが、その例は「勝利の栄冠を―る」 「自由を―る」。 「努力して自分のものとする」の意味で、「勝ち得る」がふさわ しいのか…難しいです。 プロ野球選手の話ですので、球団との契約更改交渉で「年棒を勝 ち取った」と取るのでしょうか。 ◎174ページ 11行目◎ 誤「…たまたま黒田先生のお名前が上がったので…」 正「…たまたま黒田先生のお名前が挙がったので…」 「有名になる」という意味の「名を上げる」ではなく、「はっき り分かるように示す、列挙など」の意ですので、「名を挙げる」 に。 ◎242ページ 15行目◎ 誤「…雑居ビルの三階角部屋にある…の呼び鈴を押した。」 正「…雑居ビルの三階角部屋にある…のブザーを押した。」 状況がよく分からないので判断しにくいと思います。 光景がまざまざと目に浮かぶ、というわけにはいきません。 「呼び鈴」は「人を呼ぶために鳴らすベル」と辞書にあり、 ホテルや会社の無人受付カウンターなどにある「振鈴(しんれ い)」や「卓上ベル」の印象が強いです。 一軒家なら「ドアチャイム」「ドアベル」になるのでしょうか。 また、ドアを前にするなら「ノッカー」やブザーが鳴って合図す るドアの外側についた「押しボタン呼鈴」「インターホン」か。 雑居ビルの一階階段横に設置されている「呼び出し用のブザー」 か、三階の角部屋のドアの横にある「ドアチャイム」か、ドアを 開け目の前にある受付カウンターに置いてある「卓上ベル」か… 断定できませんね。 ◎256ページ 9行目◎ 誤「次の餌箱の前で増渕が一輪車を止めた。」 正「次の餌箱の前で増渕が手押し車(ネコ車)を止めた。」 「一輪車」は、一般的には「車輪が一つの乗用遊具」「スポーツ や曲技に使われる、車輪を一つしか持たない自転車」を指すもの と思われます。 「手押し車」は手押し式の運搬台車。山道や畑や工事現場などで 農作物や資材を運ぶのに利用されるもの。手車(てぐるま)と も。 ウィキペディアでは「一輪車」を― 車輪が一つのものは孤輪車(こりんしゃ)という。また、単に 一輪車(いちりんしゃ)ともいうが、乗車遊具の一輪車と区別 するため工事用(こうじよう)あるいは農作業用(のうさぎょ う)一輪車と呼ぶこともある。 さらに、猫車(ねこぐるま)、猫(ねこ)とも呼ばれる。理由と しては、猫のように狭いところに入ることが出来ることから来て いるという説もあれば、また猫のようにゴロゴロと音を立てるこ とを起因するとする説、裏返した姿が猫の丸まっている姿に似て いるからとする説もある。 ―と説明しています。 左右に車輪を二つ並べているのに「一輪車」と称する農業・工事 用具も存在します。 「農作業用の一輪車」が適切かとは思いますが、長いので「手押 し車」か「ネコ車」がいいのでは。 ◎315ページ 6行目◎ 誤「相手との間合いを図りつつ…」 正「相手との間合いを見計らいつつ…」 [間合い]の用例としては、「―をとる」「―を見計らう」。 「はかる」を使うなら、「計算・計画」の意で「時間・タイミン グを計る」と同じように「計る」とするのがいいのでしょうか。 「間合い」を「相手との距離」とストレートにとると、「測る」 でもいいと思いますが、紛らわしいなら平仮名書き「はかりつ つ」になるのでしょうね。 「意図、企図」の意の[図る]にはなりませんので、これは間違 い。 423ページに「捜査の進捗度合いをはかりながら…」という文章 があります。漢字を使うなら「度合いを測りながら…」に。
報告者:nande3