帰郷 刑事・鳴沢了
誤植報告
ISBN:4-12-204651-3 著者:堂場 瞬一(どうば しゅんいち) 発行:2006年2月25日 初版発行(中公文庫) 中公文庫から全10作と番外編の短編集1冊が刊行されている 「刑事・鳴沢了シリーズ」の第五弾、文庫書下ろし。 古い本です。再読したので報告します。 <誤植というより校正ミス? 意図的なミス?> ◎8ページ 5行目ほか◎ 誤「…デスクの上のトレイには、持ち主を待つように…」 正「…デスクの上のトレーには、持ち主を待つように…」 間違いとは言えませんが、カタカナ表記の問題です。 作者の個性とも言えるのですが、一般的な表記と比べ、 違和感があるので読みにくいと思います。 10ページ「インタフォン(→インターホン)」、24ページ 「ヴィデオ(→ビデオ)」、34ページ「グレイ(→グレー)」、 46ページ「スウィッチ(→スイッチ)」などが出てきます。 新聞用字用語集の「外来語用例集」やカタカナ語辞典から。 ※「灰色」は「グレイ」とも言われますが、一般的なカタカナ表 記は「グレー」。「グレースケール」などと使われます。英語表 記では「gray / grey」。 「グレイ」も「gray / grey」。「GLAY」は日本のロックバン ド。「Gray / gray」は収線量(物質が受けた放射線量)の単 位。Gy。グレイ (単位)、グレイ符号。2進表現の一つ。 ◎9ページ 4行目◎ 誤「…今頃二メートルを越す雪に埋もれているはずだし…」 正「…今頃二メートルを超す雪に埋もれているはずだし…」 「一定の分量・限界を過ぎて先にいく」意味では[超]。 ◎11ページ 14行目ほか◎ 誤「頭と肩に降り積もった雪が溶け、髪が濡れて…」 正「頭と肩に降り積もった雪が解け、髪が濡れて…」 「鉄が溶ける」「雪・氷を溶かす(人工的)」ように「加熱など によって固体を液体にする」のではなく、自然現象なら「雪解 け」「雪・氷を解かす」の[解]で。 104ページに面白い例?がありました。「大根の繊維がほろりと 解(ルビ=ほど)けて溶ける」。 ◎20ページ 2行目◎ 誤「十二歳で一人ぼっちになる…」 正「十二歳で独りぼっちになる…」 人数に重点を置いた「一人っ子」「一人娘」「一人勝ち」などの 表記ではなく、「孤独、独断、独占、単独」の意味ですので、 「独り旅」「独り相撲」と同じく「独りぼっち」に。 103ページに「いくら一人暮らしだからって…」という文章があ ります。こちらも「独り暮らし」がよろしいかと。 ◎26ページ 8行目◎ 誤「(葬式に出席して)黙って線香を上げて帰るなら…」 正「(葬式に出席して)黙って焼香して帰るなら…」 [線香]は、火をつけて仏前に供えるもの、かと。[仏前]という より[仏壇]に供える? お葬式は「ご焼香をお願いします」(回し焼香、立礼焼香)。 葬儀・葬式のマナーは難しいですね。「葬儀や告別式には抹香を 用いますが、それ以外の法事やお通夜や一般的な弔問には、線香 を上げることが多い」とされているようです。 儀式においては抹香を用いることが多いので「焼香」という言葉 自体が「抹香をあげること」を指し、一般的な弔問や、普段に用 いられる線香を使用する場合には「線香を上げる」と言う、とい う説もあるようです。 同じページに[焼香台]という言葉が出てきます。これからは、立 礼焼香、座礼焼香、回し焼香、焼香炉といった言葉が連想されま す。 ◎165ページ 9行目◎ 誤「大西の眉がきゅっと釣り上がる。」 正「大西の眉がきゅっとつり上がる(吊り上がる)。」 [吊]は新聞漢字表にない字なので、平仮名書きが一般的なようで す。 新聞用字用語集では、[釣]は「針・かぎなどで引っ掛けて上げ る、誘い込む」の意で「釣り合い」「大魚を釣り上げる」「甘 言で釣る」などを例としています。 [つる(吊る)]は「ぶら下げる、引っ張るなど」の意。「つり球 (野球)」「つり輪」「目をつり上げる」などが例。 ◎229ページ 17行目◎ 誤「…俺の死体が信濃川から上がったら…」 正「…俺の死体が信濃川から揚がったら…」 「高く掲げる、浮揚、元の場所に戻す・戻る」の意味で「海から 車を引き揚げる」「海外から引き揚げる」「水死体の引き揚げ」 「花道を引き揚げる」などを新聞用字用語集では例に挙げていま す。 ◎329ページ 12行目◎ 誤「タイミングを測る間もなく…」 正「タイミングを計る間もなく…」 「計算・計画」の意ですので[計る]を用いるかと。 「時間・タイミングを計る」(新聞用字用語集から)
報告者:nande3