ハング Hang
誤植報告
ISBN:978-4-12-205693-0 著者:誉田 哲也(ほんだ てつや) 発行:2012年9月25日 初版(中公文庫) <誤植というより校正ミス? 意図的なミス?> ※徳間書店刊『ハング』(2009年9月)の文庫化です。 ◎20ページ 11行目◎ 誤「…ただの一人相撲(ルビ=ひとりずもう)だな」 正「…ただの独り相撲だな」 微妙な表現です。「人数に重点」がある漢字表現の[一人]。 演者が一人の[一人芝居]はありますが、[一人相撲]はないと思い ます。[相撲]は、土俵の上で力士が組み合って戦うもので、基本 は[二人]。 固有名詞[一人相撲]ならば、「本来二人で行うべき相撲を一人で 行う神事や大道芸」になるでしょう。 比喩表現で、「相手もいないのに、また、周囲の事情や結果を考 えずに、ひとりで意気込むこと」の意で[独り相撲]。 最近、この二つの意味を示して[一人相撲]とする辞典もあります が、古い辞典では、単独で[独り相撲]を解説していました。 比喩として使うならば、[独り相撲]がよろしいかと。 ◎58ページ 5行目◎ 誤「…命と引き替えにすることも厭わず…」 正「…命と引き換えにすることも厭わず…」 [替える]は、「AをやめてBにかえる」の意。 <「はかる」の漢字は?> ◎32ページ 8行目◎ 誤「…この竹本という男の力量も図れるというものだろう。」 正「…この竹本という男の力量も測れるというものだろう。」 ◎71ページ 10行目◎ 誤「あくまでもお店の形を計るだけです。」 正「あくまでもお店の形を測るだけです。」 同じ71ページの文章に「…天井の高さ…などを測って」と正しい 表現があります。 ◎393ページ 14行目◎ 誤「そこであなたは名越和馬と諮(ルビ=はか)り、名越の娘婿で ある岩城繁男を使って、馳のアリバイ作りを、奥山という警視 庁の刑事にさせた」 正「そこであなたは名越和馬と謀り、名越の娘婿である岩城繁男を 使って、馳のアリバイ作りを、奥山という警視庁の刑事にさせ た」 いいような悪いような…判断に迷います。 [諮る]=(下の者に)意見を求める、相談する [謀る]=だます、計略にかける 全体としては「はかりごと(謀)」なので、[謀る]がいいような 気がします。 ※「新聞用語用字集」から [計る]=計算、計画……国の将来を計る、タイミングを計るなど [図る]=意図、企画……合理化を図る、便宜を図るなど [量る]=計量、推量(注 「身長と体重を測る」は別)……推し 量る、容積を量るなど [測る]=物事の広狭・深浅・長短・遠近・高低・大将などをはか る、測定、測量、推測……真意を測る、才能を測るなど [謀る]=謀議、謀略……悪事を謀る、暗殺を謀るなど [諮る]=たずね相談する……審議会に諮るなど <手を上げる、手を挙げるの使い分けは?> ◎159ページ 7行目◎ 誤「そこで手を上げ、タクシーを拾った。」 正「そこで手を挙げ、タクシーを拾った。」 このサイトでも再三指摘している言葉です。 76ページでは「ただ、と植草が手を挙げる。」と使っています。 [挙手]の意味で、正しい使い方です。 222ページには「津原が手を上げるとすぐに気づき…」という文章 があります。 285ページには「…手を上げて横断してしまう…」という文章があ ります。 「下がる・下げるの対語」の[上]ではなく、「はっきり分かるよ うに示す、意思表示」の意の[挙]を使うところでしょう。 タクシーを拾うシーンもしかり。 [手を上げる]は、辞典に示されている 1 降参する。「攻めたてられて思わず―・げる」 2 なぐろうとして手を振り上げる。乱暴をはたらく。「親に向 かって―・げる」 3 腕前や技量が進歩する。上達する。「ゴルフの―・げる」 の意味限定で使うのがよろしいかと。 ◎368ページ 5行目◎ 誤「…ノブを引くと、火が起こる仕掛けにでもなっていた…」 正「…ノブを引くと、火がおこる仕掛けにでもなっていた…」 微妙な表現です。[発生]という意味では[起こる]の表記になり、 「事件が起こる」「発作が起こる」などと使うようですが…。 発生は発生なのですが、[火]なので…ここは、漢字で書くなら [熾る]でしょう。 または、表現を変えて、「…ノブを引くと、火花が出る(発生す る)仕掛けにでもなっていた…」「…ノブを引くと、スパークす る仕掛けにでもなっていた…」でしょうか。
報告者:nande3