早春の化石
誤植報告
ISBN:978-4-396-63339-4 著者:柴田 哲孝(しばた てつたか) 発行:2010年4月20日 初版第1刷 『渇いた夏』に続く、私立探偵・神山健介シリーズ第二弾。 <誤植というより校正ミス? 意図?> ◎7ページ 7行目◎ 誤「…全身を蝕む緊張は治まらなかった。」 正「…全身を蝕む緊張は収まらなかった。」 新聞用字用語集によると、[治]は「乱の対語、鎮まる、苦痛が去る」 という意味で、「痛みが治まる」「気が治まる」「国が治まる」など と使います。 一方の[収]は「収容、収拾、取り込む、元通りの安定した状態にする」 という意で、「怒りを収める」「インフレが収まる」「興奮が収まる」 「写真・ビデオに収める」などを例に挙げています。 ◎12ページ 5行目◎ 誤「…眩い陽射しが射し込んでいた。」 正「…眩い陽(陽光)が射し込んでいた。」 [陽射し(日差し)]と[射し込む(差し込む)]で重複表現に当たると 思います。 143ページでは「…目映い陽光が射し込みはじめた。」と表現していま す。 ◎12ページ 13行目◎ 誤「部屋が温まってくると…」 正「部屋が暖まってくると…」 ◎15ページ 16行目◎ 誤「エンジンを十分に暖気し、一度アクセルを踏み込む。」 正「エンジンを十分に暖機し、一度アクセルを踏み込む。」 [暖気]は「暖かい気候。また、あたたかい程度。あたたかさ」。 単に[暖機]と呼ばれることもありますが、「機械を始動した直後などに 低負荷での運転を一定時間行う」機械用語の一つで[暖機運転]のこと。 ◎20ページ 2行目◎ 誤「…性格や立振舞に至るまで…」 正「…性格や立ち居振る舞いに至るまで…」 送り仮名は置いておきます。 [起居]を指していう言葉なのですが、「立ち振る舞い」になると、立ち 姿のみで座った状態の身のこなしが抜けることになります。 本来の意味で正しく使うならば「立ち居振る舞い」にしなくてはならな いでしょう。 現在では「立ち居振る舞い」と同じ意で「立ち振る舞い」が使われる ケースが多いようですが、間違っていると思います。 「旅立ち・門出を祝って供されるごちそう。たちぶるまい。」という意 味の「立ち - 振る舞い」という言葉があるそうです。 似ている言葉であるがゆえに、間違った使われ方をして、その結果、 「立ち振る舞い」=「立ち居振る舞い」になってしまったのでしょう。 ◎27ページ 14行目◎ 誤「家族の人たちに、申し訳ない。」 正「家族に(家族の皆さんに)、申し訳ない。」 微妙な表現です。「○○家の人たち」なら分かるのですが…。違和感。 「住民の人たち」と同じ重複表現になるかもしれません。 ◎72ページ 11行目◎ 誤「駅の階段を登っていく。」 正「駅の階段を上っていく。」 ◎84ページ 5行目◎ 誤「…身換(ルビ=みがわ)りになったんですよ。」 正「…身代わりになったんですよ。」 [換]という漢字にこだわりがあるのかもしれませんが…「交換」という 意味ではないので、[身代(わ)り]か[身替(わ)り]に。 新聞用字用語集では[身代わり]としています。 ◎85ページ 14行目◎ 誤「別に。どうせおれは、一人者だ」 正「別に。どうせおれは、独り者だ」 ◎89ページ 6行目◎ 誤「神山はツナギに着換え…」 正「神山はツナギに着替え…」 やはり[換]が好きなようです。[着換え]は間違いではありませんが、 新聞用字用語集では[着替え]に統一する、としています。 ◎117ページ 14行目◎ 誤「同じ歓楽街でも、札幌(ルビ=さっぽろ)の薄野(ルビ=すすきの) や東京の吉原(ルビ=よしわら)とは違う。」 正「同じ歓楽街でも、札幌のススキノや東京の吉原(ルビ=よしわら)とは 違う。」 間違いとは言い切れませんが…。 新聞用字用語集が紛らわしい地名として挙げています。 [ススキノ]は、歓楽街として使う場合で「札幌・ススキノ」と書く。 [薄野]は、地域の総称。交番は「薄野交番」。 [すすきの]は、地下鉄の駅名で、行政上の地名としては存在しない。 ◎132ページ 5行目◎ 誤「それなら、他の子と換わりますか」 正「それなら、他の子と代わりますか」 ◎174ページ 14行目◎ 誤「…(いわき東署の…)入り口に昇る階段を駆け上がった。」 正「…(いわき東署の…)入り口階段を駆け上がった。」 警察庁舎の玄関(入り口)に至るアプローチ部分が階段になっているの だと思います。「入り口に続く階段」「入り口に至る階段」のことで、 「入り口に昇る」という表現は、普通は有り得ないでしょう。「入り口 に向かう」「入り口を目指して」くらい。 「高床式住居の入り口から垂れ下がるロープを使ってよじ登る」? ◎218ページ 15行目◎ 誤「…何物にも代え難(ルビ=がた)いほどに美しい体を。」 正「…何物にも替え難(ルビ=がた)いほどに美しい体を。」 微妙な使い方ですが、新聞用字用語集では「替え難い」としています。 ◎228ページ 5行目ほか◎ 誤「別に、気を遣ってもらわなくてもかまわない。」 正「別に、気を使ってもらわなくてもかまわない。」 厳密には間違いではないかもしれません。 新聞用字用語集では、[使]を「一般用語。主に動詞に」、[遣]を「特別 用語。主に名詞に」と区別して説明しています。 [使]は「お使いに行く」「気・心・神経を使う」「使い古し」など。 [遣]は「息遣い」「気遣う」「仮名遣い」「心遣い」「無駄遣い」「文 字遣い」など。 ◎229ページ 5行目◎ 誤「間もなく、〇時ちょうどになる。…」 正「間もなく、零時ちょうどになる。」 これも間違いではありませんが、誤解のもと。 ◎252ページ 2行目◎ 誤「…垂幕の下に数一〇人の背広姿、もしくは軍服姿の…」 正「…垂幕の下に数十人の背広姿、もしくは軍服姿の…」 漢数字(または算用数字)の「〇から九まで」を用い、数を表す単位 「十、百、千、…」を使わないで概数を示すには無理というか限界があ ると思います。 この小説は縦書きで、「一〇時一五分」「二一歳」「四〇〇人」「一〇 万キロ」などと表記しています。一方で年齢に関しては「三十代」「五 十代」などと表記しています。 120人から130人を示す概数の「百数十人」を示すとすると、「一〇〇 数一〇人」? やはり無理があります。 211ページにも「数一〇年前」という表現がありました。
報告者:nande3